サミズダート

素朴な一市民「異邦人」の政治経済雑感。兼備忘録ときどき日記。

【おさらい】辺野古埋め立て工事が何故「違法」なのか。死に瀕する法治国家日本。

読者の皆さま、遅ればせながら明けましておめでとうございます。お久しぶりです。異邦人です。

 

ブログを立ち上げた当初の「記事1日一本」という目標は、物臭で文章力のない私に手に負えるものではなかったようで、今や有名無実化し、この記事は前回の記事から実に3か月ぶりという有様です。どうぞ皆さま、おマヌケ下さい笑。

 

さて、今日の記事は、現在安倍政権によって強行されている辺野古埋め立て工事が、そもそも違法であるという基本的な事実を再確認する為のものです。

 

周知のとおり、先の沖縄県知事選挙における玉城デニー氏の勝利、続く豊見城市長選挙での山川仁氏、そして県都那覇における城間幹子氏の勝利と、沖縄県では「辺野古新基地建設反対」を明確な公約として掲げた「オール沖縄」の候補が連勝しました。

 

議院内閣制にあって基本的には与党内部のパワーバランスで決まる首相とは異なり、自治体の首長は直接選挙によって純粋な民意により選出されます。つまり、民主的正当性の面においては自治体の首長が首相に勝るのは自明の理であり、現政権がいくら「国防は国家の専権事項だ」という国家の論理を持ち出そうと、度重なる「辺野古反対」の意思表示を行った沖縄の民意を否定する正当な理由はありません。

 

ましてや、安倍首相は沖縄県民の気持ちに寄り添う」といったセリフを何度も口にしている訳ですから、民主主義国家である我が国においては尚更、普天間基地返還と辺野古新基地をトレードオフにする構造を維持する必要はない筈です。そもそも、自国市民の悲鳴を蔑ろにして行われる「国防」など、自己矛盾の塊でしかありません。

 

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(ANNより)

 

しかし、実際に安倍政権が沖縄に対して講じた措置は、案の定「沖縄県民の気持ち」を踏み躙るものであるのみならず、法の支配や民主主義といった統治基盤を根底から覆す常軌を逸した信じ難い暴力的手法でした。その手法とは、本来であれば「国民の権利利益の救済」の為に存在する行政不服審査法を「国」が用いるという、完全なる違法行為だったのです。

 

ちなみに、玉城県政は沖縄県民に対する公約に従い、辺野古新基地建設を阻止する為に「公有水面埋立法」という法令に則り、基地建設に不可欠な埋め立て承認を撤回しました。これは完全に適法な行為であり、通常の法律感覚が根付いている国家なら手出しの出来ない状態になります。

 

実際、そのように正面から沖縄県に対抗する術を失ったからこそ、安倍政権は今回のような違法行為に訴えかけ、しかも国の機関(沖縄防衛局)が国の機関(国土交通省)」に不服申立てをするという「自作自演」によって、前述の玉城県政による適法な埋め立て承認撤回に対して執行停止を申し立てたのでしょうが、我が国は「法治国家」ですから、そのように法を二重に否定する振る舞いが許されるはずもありません。

 

 

 

くどいようですが、行政不服審査法「国民」が「行政」による不当または違法な処分によって不利益を受けた際に「国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保すること(同法1条1項)」を目的とする法律です。安倍政権は「国は私人と同じ」という珍説をこしらえて自己正当化をしていますが、行政が一般市民と同じである訳がありません。自分で何を口走っているのか分からないのだとしたら重症です。

 

ryukyushimpo.jp

 

そもそも、権利救済されるべき国民の意思表示を潰す為に、国民の権利救済の為に制定された法律を使うという時点で安倍政権は非常に悪質です。趣旨と真逆の方法で使える法律など存在する訳がありませんし、そんな方法が存在するとしたら法律として何の意味があるというのでしょうか。犯罪行為を裁くために存在する刑法を、犯罪行為を促す為に使うようなものです。

 

この違法な暴挙については、著名な行政法学者である名古屋大学の紙野健二教授らが呼びかけ人となり、実に110人もの行政研究者が法治国家にもとる」と断じ、連名で辺野古埋立承認問題における日本政府による再度の行政不服審査制度の乱用を憂う」と題した声明を発表しています。

 

henoko-adlaw.blogspot.com

 

このように、法を第一に遵守すべき国家が、自ら法を違法に逆用して工事を進め、民主主義だけでなく「法の支配」という近代国家を構成する大黒柱を蔑ろにして、制度的に破壊してしまっているというのが、悲しいかな安倍政権下の我が国の現状です。

 

年が明けてからも、安倍首相は「土砂投入海域のサンゴは移した」などというウソを、あろう事か公共放送であるNHKで垂れ流し、大きな批判を浴びていますが、そもそも基本的な工事自体が、民意に反しているだけでなく違法であると認識し、権力による暴力とウソによって沖縄を虐げる安倍政権と、粘り強く戦っていかなければならないのです。