先月28日の記者会見において、持病の悪化を理由に安倍首相が辞任を表明して約2週間。昨日「デキレース」という言葉が余りにも御似合いな自民党総裁選が終わり、この7年8ヶ月に及ぶ安倍内閣において官房長官の地位にあった菅義偉氏が新総裁へ”選出”されました。
この間、菅官房長官を巡る報道は、周知の通り報道の名に値しないような惨憺たる有様で、官房長官として今日に至るまでの安倍長期政権における腐敗を対外的に覆い隠す役割を演じた菅義偉氏への批判は乏しく、秋田の農家出身で苦労人だった云々という菅氏個人の身の上話だったり、果ては「パンケーキ好き」などと、全く政策とは無関係な部分での芸能エンタメのような下らないイメージを膨らませる一方であり、ここは独裁国家かと見紛うほどの体たらくでした。
なので、このブログでは暫くの間、出来得る限り菅義偉という政治家が如何なる愚行を繰り広げてきたのか、主権者として知っておいても全く損はない情報を可能な限り伝えていこうと思います。まず、今日は菅官房長官下における「人事」について少し触れてみましょう。
新総裁に”選出”された菅氏は「縦割り行政、既得権益、前例主義の打倒」という、字面だけを見れば如何にも前向きな改革者であるかのようなスローガンを掲げておりましたが、実際に安倍政権下で設置された内閣人事局の責任者として、これまでの官僚主導型人事を破壊して人事という最大の権力作用を掌握した菅義偉氏が、実際に如何なる人事采配を行ってきたか。具体例でお見せしたいと思います。
先に言っておきますが、下記に挙げるのは主だった人物の人事のみです。全て挙げるとキリがないレベルであるというのを予め御承知おき下さい。
★佐川宣寿氏(財務省)
森友問題を巡る答弁で虚偽が発覚したにも拘わらず、財務省理財局長から国税庁長官へと出世。その最中に安倍首相の答弁に沿う形で行われた公文書改竄を密かに進めており、改竄問題発覚後も部下が命を絶つまで追い詰められる悲劇が発生したのも何処吹く風。驚くべきことに懲戒免職処分とはならず自主退職。
★太田充氏(財務省)
前述した佐川氏の後任として財務省理財局長に就任後、公文書改竄を強要され自死に追い込まれた近畿財務局職員の手記において「詭弁を通り越した虚偽答弁」とまで書かれた答弁を連発。それにも拘わらず財務省主計局長を経て、遂には財務省事務方トップの事務次官に起用され現在に至る。
★中村稔氏(財務省)
財務省理財局総務課長として前述の佐川宣寿理財局長(当時)の下、公文書改竄問題において「中核的な役割を担っていた」人物。財務省官房参事官を経て駐イギリス公使へと栄転。
★谷査恵子氏(経産省)
安倍首相の妻である安倍昭恵夫人付き職員として、全体の奉仕者たるべき公務員であるにも拘わらず昭恵氏に私生活で使役されていた人物。森友学園への国有地不正値引き問題で財務省と昭恵夫人の橋渡しをしていた人物。森友問題が公になり雲行きが悪くなった途端、ノンキャリア職員としては異例の在イタリア日本大使館一等書記官に”大抜擢”され、国会招致が物理的に不可能にされてしまう。その後、しれっと経産省本省の筆頭課長補佐に栄転し現在に至る。
★田村嘉啓氏(財務省)
公文書改竄問題で自死に追い込まれた赤木俊夫さんの手記において、前述した佐川氏や中村氏ら財務省本省官僚と並び「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」にリストアップされていた人物。上記の元昭恵夫人付き職員谷氏が森友問題で問い合わせをした相手方。国有財産審理室長から福岡財務支局理財部長へと出世。
菅義偉氏の秘書官を務めた。その後、警視庁刑事部長の地位にあった際、安倍首相と近しい関係にあり「総理」などの著書を出しているジャーナリストの山口敬之氏による伊藤詩織さんへの準強姦疑惑に関し、執行直前に逮捕令状の執行を差し止めるという異例の暴挙に打って出た人物。これほどの行為を犯しているにも拘わらず、警察庁の総括審議官へ出世させられた後に警察庁長官官房長を経て、事もあろうに警察庁ナンバー2の警察庁次長に栄転し現在に至る。
★黒川弘務氏(東京高等検察庁)
甘利明氏の賄賂疑惑など、安倍首相周辺の不祥事が軒並み不起訴になってきた裏側に絶えずチラついていた人物。コロナ禍発生当初の今年2月に、1981年の政府委員答弁によって国家公務員法の定年延長規定は「検察官には適用されない」と解釈が確定しているにも拘わらず、勤務延長を「閣議決定」で強行され、違法状態でありながら東京高検検事長の座に居座る。検事総長に王手を決めたところで週刊文春のスクープにより「賭けマージャン」が発覚。犯罪行為にも拘らず懲戒処分すらなく通常の退職。余り知られていないが、その違法勤務延長については、しっかり内閣人事局にも相談されているという事実がある。
★平嶋彰英氏(総務省)
総務省自治税務局長として、菅官房長官肝いりの「ふるさと納税」制度について、富裕層ほど節税効果が発生し自治体間の行き過ぎた返礼品競争を招くといった、正鵠を射た問題点を早期に主張し、総務省事務方トップの事務次官に有力視されていた人物。しかし、菅官房長官に提言した直後に総務省から出され自治大学へ異動。現在は立教大学の特任教授を務める。
如何でしたでしょうか。最後に紹介した元総務(自治)官僚の平嶋氏のように、おかしいものはおかしいと正面から意見をぶつけた官僚には冷や飯を食わせ、政権を守る為なら法を犯して行政組織において最も重要な公文書すら改竄しても重用してきたのが、菅官房長官の内閣人事局です。上記の具体例は前述した通り「ごく一部」でありますが、本日は時間の都合上主だったケースのみに留めますので、漸次追加していこうと思います。
こんな人物の下での偽りの新体制では、何も変わらないどころか更に腐敗が進行するのは目に見えています。私を含め、一人ひとりの声は小さいですが諦めずに訴えかけていかなければなりません。