サミズダート

素朴な一市民「異邦人」の政治経済雑感。兼備忘録ときどき日記。

酒販店への取引停止要請を撤回し西村大臣の罷免を。

 


菅義偉政権による無為無策、そして市民への外出自粛要求や飲食店への休業・時短要請と真っ向から矛盾するオリパラ強行姿勢という矛盾したメッセージが招いた感染再拡大により、最早「緊急」とは名ばかりで日常と化している「緊急事態宣言」発出。そんな滑稽劇が展開されるたびに繰り返される酒類提供飲食店への常軌を逸した引き締め政策。それに関連して、先週9日に西村康稔経済再生相が突如として言及した「金融機関への働きかけ要請」と称する事実上の経済制裁が、その余りの悪辣ぶりに堪忍袋の緒が切れた飲食店をはじめとする市民の猛批判を浴びて撤回へと追い込まれました。

 

 

しかし、いくら撤回しようとも内容は全銀協が作成した「銀行の公正取引に関する手引」(PDFファイル)にもあるように、銀行の「禁止行為」の一つとして銀行法施行規則が定める「顧客に対し、銀行としての取引上の優越的地位を不当に利用して、取引の条件又は実施について不利益を与える行為」(第14条の11の3第3項)に抵触する非常に悪質なものであり、端的に言えば違法行為の奨励であって法治国家の政治家としては最も忌むべき行為です。一度示された以上は取り返しがつきません。

 

言葉の上でどうこうしてみせた所で、西村氏が行政権という最大の権力を行使できる大臣の地位に居座り続ける以上は微塵も説得力がありません。しかも、この「撤回」は公式の記者会見や国会の場で行われたものではなく、ツイッターで投げやりに投稿されたものであり、極めつけは「趣旨を十分に伝えられず、反省しております」などという、まるで受け手たる市民が誤った趣旨に基づいて反応しているかのような物言いとなっています。

 

 ↓問題のツイート。

 

コロナ禍で経営困難に陥り行政からの協力金も遅々として手元に届かず、持続化給付金や家賃支援給付金など、本来なら緊急事態宣言が発出される毎に行われるべき給付も一度しかなく、金融機関からの借り入れに頼らざるを得ない飲食店に再度の締め付けを強化している真っ最中に、突然「金融機関」を持ち出されたら融資の制限など資金源への攻撃だと受け取るのは当然ですし、そうとしか解釈のしようがありません。

 

政権党とはいえ一政党に過ぎない自民党の二階幹事長に対しては全く必要のない「謝罪」をしながら、憲法によって奉仕すべきと定められている主権者に対しては「誤解」扱いで謝罪すらもしない西村氏は、その思考において党と主権者の優先順位が完全に逆転しており、一党独裁的発想が染み付いてしまっている訳です。こんな人物には行政権の一角を担う大臣としての資格は全くありませんし、直ちに罷免すべきです。

 

 

 

 

 

そもそも、西村大臣の謂わば「禁酒ファシズム」はこれだけではありません。7月8日の拙稿「政府は酒への責任転嫁をやめよ」で言及した、酒類提供飲食店においては資金と両輪をなす生命線である酒販卸売業者に対する取引停止要請が「金融機関」発言のインパクトに押されてしぶとく生き残っているのです。

 

www.samizdat1917.com

 

この酒販店に対する酒類提供飲食店との取引停止要請は深刻化していて、既に西村大臣の発言に留まらず、酒類業中央団体連絡協議会宛てに国税庁酒税課から「依頼」と称する「取引停止」に明言された文書が発出されており、菅義偉内閣において既に正式な意思表示として共有されている実態が伺えます。

 

togetter.com

 

国税庁は周知の通り徴税権という警察権と並ぶ強大な国家権力を司る財務省の外局であり、税務執行と言われる警察権力並みの強制捜査の権限をも有する機関でありますから、いくら「依頼」とは雖も権力行使の受け手である酒販店にとっては圧力でしかありません。権力関係において優位に立っている組織を通じて酒類関係の経済関係を破壊しようとする点において、この脱法的な取引停止要請は「金融機関」発言同様に悪質であり、即時撤回されなければなりません。

 

西村大臣の罷免は最低条件として、このような暴挙を政府方針として容認した菅義偉内閣も総辞職も強く求めていかなければならないでしょう。人事権を濫用して官僚を服従させることは出来ても、主権者はそうはいかないという事実を見せつけなければ、この国は永遠に民主主義国家にはなり切れません。

 

【追記】

本稿の前半部分で言及した西村大臣の「金融機関」発言に関して、東京新聞が悍ましい実態を報じました。まずは、下記に示した実際の記事をご覧ください。

 

www.tokyo-np.co.jp

 

件の「金融機関」発言は、あたかも西村大臣が独断専行で言い放っていた扱いとなっており、内閣の責任者である筈の菅義偉首相に至っては、西村大臣が実際に問題の発言を言い放った後であったにもかかわらず「絶対にしない」などと、意味不明の断言までして否定していましたが、この報道の通りならば政府全体で横断的に「金融機関への働きかけ」と称する飲食店抹殺策動が共有されていたという事実を意味します。

 

そうであるならば、菅義偉政権は本稿が断じた通り、銀行に対して銀行法施行規則が明文で禁ずる紛れもない違法行為である「優越的地位の濫用」を教唆したという形になり、法治国家の行政組織と呼べる集団ではなくなります。タイトルには「西村大臣の罷免を」としましたが、やはり菅義偉政権全体が国政から消え去るべき段階に来ていると明言しておきます。