サミズダート

素朴な一市民「異邦人」の政治経済雑感。兼備忘録ときどき日記。

緊急事態条項は必要ない。

現在猛威を振るっている新型コロナウイルスに便乗し、改憲により「緊急事態条項」を新設すべきだという主張が、自民党や維新といった所謂「改憲勢力」から上がってきています。

安倍首相が今月3日の憲法記念日に合わせ、緊急事態条項が必要であるという旨のメッセージを発したのも記憶に新しいと思います。

「緊急事態条項」というのは、内閣ひいては内閣総理大臣が任意のタイミングで「緊急事態だ」と宣言しさえすれば、本来なら憲法の範囲内で衆参両院で十分に審議して作られるべきである法律を、内閣総理大臣の一存で憲法の範囲すら超えて一方的に作れるようになる条文です。つまり時の内閣総理大臣による命令が法として市民を縛る専制政治が行われる訳です。

代表的な悪例を一つ挙げるとすれば、かつてドイツでナチ党が独裁権力を振るう根拠となった「全権委任法」のようなものと考えて差し支えありません。

ですが、果たして今回の新型コロナウイルスへの政府対応の拙さは「緊急事態条項」が無かったせいだと言えるのでしょうか。



結論から言わせてもらえば、答えは「ノー」です。各国から「少なすぎる」と批判されているPCR検査が増えないのは、韓国などで先進的事例が積み上げられ、世界中で採用された「ドライブスルー方式」を躊躇うなど、極めて非合理的な対応の積み重ねてきた政府の怠慢に過ぎません。

更に、コロナ対策に必要不可欠とされていた補正予算案の国会上程が、あろう事か予算年度を跨ぎ、その成立が先月末にまで遅れに遅れてしまったのも、野党によるコロナ対策予算の提案をことごとく撥ね付けて、後手後手の対応に甘んじた政府の怠慢です。

つまり、安倍政権は自分達が非常時にあって極めて無能かつ無気力であるという厳然たる事実を棚上げし、市民の目を逸らさせる為に「憲法のせい」とすることで責任回避をすると同時に、あわよくば独裁権力を確立する為の改憲に利用しようとしているだけなのです。仮に緊急事態条項が存在し、それを利用して安倍首相の独裁体制になったとしても今のように何もかもが後手後手の政府に全権が集中する地獄が到来するだけでしょう。

火事場泥棒と詐欺師が同居する、この恐ろしいまでに犯罪的な政権に、これ以上専横を許してはなりません。