サミズダート

素朴な一市民「異邦人」の政治経済雑感。兼備忘録ときどき日記。

自民党はいい加減に「少子化問題」の責任転嫁をやめよ。

桜田前五輪相が、29日に開かれた猪口元少子化相のパーティーで発した「お子さん、お孫さんには子どもを最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」という、余りにも無神経な発言に非難が集中しています。

 

mainichi.jp

 

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桜田義孝・前五輪相(写真:時事)

 

桜田氏といえば、先月「復興よりも議員が大事」という被災地軽視の失言が決定打となり辞任したばかりで、正直「またか」と思っていらっしゃる方は多いと思いますが、この「子どもを産め」発言は現在の安倍自民党の「女性と子ども」に対する姿勢、体質を表すものであり、桜田氏個人の失言として流すべきではありません。

 

例えば、公文書改ざんやセクハラ問題などの責任を一切取らず、今も副総理兼財務相という「安倍政権ナンバー2」の地位に居座り続け、少子化対策を含む予算配分に大きな影響力を持つ麻生太郎氏は、2度も「子どもを産まない方が問題」という暴言を口にしています。

 

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また、昨年の6月には自民党ナンバー2である二階幹事長が「子どもを産まないのは勝手な考え」という暴言を口にしています。

 

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更に、安倍政権の尖兵として沖縄の民主主義を踏み躙り、また内閣人事局を通じた官僚支配に関わるなど、国家を私物化し市民を抑圧する安倍強権体制の立役者でありながら、新元号の発表程度で今では人気者扱いされている菅官房長官も「沢山産んで国家に貢献」などと、まるで子どもを「国のコマ」扱いする発言をしています。

 

www.huffingtonpost.jp

 

この他にも「女性と子ども」に纏わる自民党政治家の暴言や失言は多々ありますが、取り敢えずは上述した自民党の権力中枢にいる政治家達の発言を見れば、今の自民党が如何なる思想をもって少子化問題を捉えているか分かると思います。

 

つまり自民党にとって少子化問題とは政治の責任ではなく、上述した麻生太郎二階俊博菅義偉の発言を総合しますと「子どもを産まずに国家へ貢献しようとしない勝手な市民が悪い」という訳です。

 

確かに、子どもはいらないという人はいるでしょう。しかし、子どもを作るか否かは我が民主主義社会においては完全な自己決定権の範疇であり、他者はおろか国家が軽々しく「ああしろこうしろ」と口出しすべき性質の問題ではありません。出産という行為が時には母体の生命と引き換えとなる事実に照らせば分かるはずです。

 

そして、そもそも論として少子化問題は「子どもはいらない」という人々によって引き起こされている訳ではありません。政府・厚労省に属する研究機関である「国立社会保障・人口問題研究所」が実施している意識調査によれば、子どもを産まない理由のダントツ1位は「子育てや教育にお金が掛かりすぎるから」となっており、30代では8割を超えています。下のグラフをご覧ください。

 

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つまり、少子化問題の原因を作り出しているのは、子どもを産み育てるに十分な支援や制度設計をしてこなかった政治であり、罷り間違っても市民個々人の責任ではないのです。それは、自民党が与党としてコントロールしている政府自身の調査で明らかになっているにも関わらず、そんな自民党を動かす立場にある人々が、そのデータを無視してあくまで市民に責任転嫁するようでは全く話になりません。

 

そもそも、段階的な派遣法の改悪などによって、労働者階級の4割を平均年収が200万円以下の非正規雇用労働者に変えたのは自民党であり、高すぎる学費や「奨学金」などと称する事実上の学生ローンで現役の子育て世代と、将来子育てする世代を困窮させているのも自民党です。そして何より「第三次ベビーブーム」の火付け役となる筈だった団塊ジュニア世代を、緊縮財政による官製不景気によって就職氷河期世代に変え、少子化を決定的にしたのは自民党ではありませんか。

 

このように、少子化問題に対する直接的な責任を多分に負っている自民党の政治家が、事もあろうに市民に責任転嫁するのは決して許されません。しかし、染みついた体質というのは一朝一夕に改善されるものではないでしょうし、現に自民党は子育てを支援するどころか待機児童問題を悪化させ、高所得者しか恩恵を受けない幼保無償化を先行させる支離滅裂な政策を進めており、また「ひとり親家庭」に不可欠な生活保護母子加算を削減する冷血ぶりを全開にしています。

 

もはや少子化問題を解決する上で最大のガンは自民党と言っても過言ではなく、このガンを徹底的に除去しなければ話は始まりません。その為の絶好の機会が、この夏の参院選有権者の皆さんは、本当にこの国を常軌に戻せる政党は何処なのか、良く吟味した上で必ず投票に行きましょう。