サミズダート

素朴な一市民「異邦人」の政治経済雑感。兼備忘録ときどき日記。

果たされぬ説明責任。加計孝太郎理事長の証人喚問は不可避。

去る6月19日、大阪北部地震の翌日かつワールドカップの当日という、メディアや世間の目がそちらに向いているタイミングを狙い、わずか2時間前に突如として会見の実施を通告し、更に地元岡山のメディア以外は全てシャットアウトするという卑劣な手段を総動員し、その実たった30分程度しか会見を開かず、全てを渡辺事務局長の責任で片付けた加計学園の加計孝太郎理事長。

 

そんな加計理事長が、一昨日の7日に二度目となる会見を開きました。流石に、前回のあまりの卑劣っぷりに非難が集中していた事もあって、私は逃げていないぞ、というアピールをしたかったのだろうと思います。

 

加計学園問題はもともと、獣医師の需要と供給のバランスを取るために設けられてきた規制を、官邸主導の国家戦略特区制度によって取り払い、獣医学部の新設を認めようという表向きの動きの下で、実質的には安倍首相の「腹心の友」である加計理事長が経営する加計学園のみを対象とする利益誘導だったのではないか、という疑いから始まったものです。

 

そして、その中で「総理のご意向」文書などの疑惑を裏付ける文書記録の存在が明らかとなり、遂に今年5月には加計学園獣医学部新設が「首相案件」であり、安倍首相が2015年2月25日に利害関係者である加計理事長と面会し、その場で「新しい獣医学の考えはいいね」と発言したという、生々しい記録を愛媛県が公開しました。

 

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(NNNより)

 

この文書が出てきて一体何が問題なのかと言いますと、その答えは加計孝太郎氏と「奢ったり奢られたり」の関係だとした安倍首相の答弁にあります。何故なら、安倍首相は獣医学部を新設するにあたって必要となる国家戦略特区の議長であり、加計学園ないし法人のトップである加計理事長とは利害関係にあります。そんな関係にありながら「奢られ」ていた(饗応接待を受けていた)のが事実だとすれば、これは明白な大臣規範違反であり、もっといえば贈収賄にあたる行為です。

 

関係業者との接触に当たっては、供応接待を受けること、職務に関連して贈物や
便宜供与を受けること等であって国民の疑惑を招くような行為をしてはならない。(国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範より)

 

そうなれば、これは完全な汚職事件となり法治国家のトップである安倍首相の辞任は不可避でしょう。だからこそ安倍首相は、国家戦略特区の議長でありながら、苦し紛れに加計学園が特区の事業者に認定された昨年の「1月20日まで知らなかった」などという白々しい答弁をして、あくまで「利害関係者から供応接待は受けていない」という体裁を整えた訳ですが、愛媛県の文書はその妄言を根底から突き崩して安倍首相の大臣規範違反ないし収賄、加計理事長による贈賄を裏付ける決定的な証拠となります。故に、この文書がキーになる訳ですね。

 

 

実際、この無視したくても無視できない事実が列挙された愛媛県文書の公開を受け、今まで徹底的に雲隠れしていた加計理事長が6月19日に漸く最初の記者会見を開くに至った訳ですが、その内容は冒頭で述べたようにタイミングから部下への責任転嫁、極めつけは「記憶も記録もない」という、到底エビデンスへの反論としての体を成していないふざけた回答に終始し、姑息や愚劣といった概念を具現化したような代物で全く納得のいくものではありませんでした。

 

特に始末が悪いのが、加計理事長が「新しい獣医学部の考えはいいね」等の安倍首相発言を含む愛媛県文書にある安倍首相との面談について、自身が学園の責任者であるにもかかわらず、担当者である渡辺事務局長が「勝手にやった」「事を前に進めようとしていった」と責任転嫁したことです。その渡辺事務局長でさえも、5月末の愛媛県庁訪問で「多分私が言ったのだろうと思う」と極めて曖昧な発言しかしておらず、そんな干拓地ばりのあやふやな地盤の上に乗っかっている加計理事長の責任転嫁発言には全く信憑性がありません。

 

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(ANNより) 

 

しかも、もし仮に加計理事長の言い分に従ったとしても、市民の血税に基づく限られた財政の中から補助金を交付している自治体を詐術にかけた訳ですから、いずれにせよ加計学園教育機関として失格であり存在に正当性がないという話になります。首相との面談さえ否定しておけば他は何を言っても許されるという「腹心の友」なりの自信があったのかもしれませんが、客観的に見ればどちらに転んだとしても不法行為であり論外です。

 

このように無責任で不誠実な加計理事長の説明に納得など出来る筈もなく、真相究明どころか疑惑を更に深める結果となった会見から4ヶ月、冒頭でも述べたように一昨日の7日に二度目の記者会見と相成った訳ですが、その内容は結論から言って前回から何ら変わらぬゼロ回答に終始し、寧ろ一層と不信感を増大させる代物でした。

 

 

(YouTubeより)

 

 

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(ANNより)

 

以上に紹介した動画や画像をご覧いただけば、私が語るまでもなく如何に無意味な会見であったかはお分かりいただけるのではないでしょうか。

 

要するに、教育者である加計理事長の認識によれば、しっかりと記録を残している愛媛県に反論する自信満々の理屈は「記録にも記憶にもない」からであり、市民の血税から96億円もの補助金を交付する自治体を虚偽の事実で詐術にかけた行為は「事を進めるための勇み足」であり、しかも安倍首相の具体的な発言まで紹介した報告であるにも関わらず受け手が「誤解」した、だから自分達は悪くないという訳です。

 

丸っきり「騙される方が悪い」という詐欺師の理屈そのもので唖然としましたが、恐ろしいのは、そんな加計理事長が同じ口でコンプライアンスとガバナンスをきっちり守っていく」などと宣っていた事です。コンプライアンスとは法令遵守、ガバナンスは統治やそのプロセスを指す組織の大原則とでもいうべき概念ですが、詐欺的行為を正当化し部下に責任転嫁する人間がどの口でソレを口にするのでしょうか?全く理解できません。しかも「記録にも記憶にもない」からという頼りない根拠しか持ち合わせていない割には、愛媛県文書を「全く読んでいない」というのですから驚きです。ここまで酷いと怒りを通り越して開いた口が塞がりません。

 

以上のように、結果的に火に油を注ぐだけで何ら得られるものがないまま終わってしまった今回の記者会見。もういい加減、加計理事長が一方的に開くタイミングを決められる記者会見を待つのではなく、国会に証人喚問をすべきです。愛媛県文書が存在している以上、安倍首相との面会の事実を否定する加計理事長の言い分には一切の信用はない上、仮に加計理事長の言い訳に従ったとしても補助金を交付する自治体をペテンにかけており、いずれにせよ市民の為にある民主的行政を悪用し、法秩序を嘲弄するれっきとした不法行為なのですから。