サミズダート

素朴な一市民「異邦人」の政治経済雑感。兼備忘録ときどき日記。

近財職員自死と「改竄」の因果関係が証明された今、麻生大臣の辞任は不可避だ。

昨年2月8日の豊中市議の告発によって「森友学園」問題が発覚して1年半以上。問題の核心である8億円以上にも及ぶ土地不正値引きの真相は、実際には存在していた記録を「ない」と言い張ったり、またゼロ回答に見せかけて最終的には森友学園への優遇措置を全て実現させた夫人付き常勤職員を、問題発覚後にノンキャリ官僚としては異例の海外大使館勤務にして事実上の口封じを行ったり、記憶が曖昧なのに「官邸の関与」だけは明確に否定する証人を国会に呼ぶ茶番を演じるなど、卑劣な手口をフルで動員している安倍政権の時間稼ぎによって未だに解明されていません。

 

そればかりか、この問題は決裁後の公文書改竄という、証拠隠滅を目的として行われた終戦直後の行政文書焼却を彷彿とさせるような、戦後最悪の国家犯罪とでもいうべき事態にまで発展しています。

 

そんな驚きの改竄行為が朝日新聞のスクープによって発覚した3月2日から5日がたったある日、痛ましいニュースが全国を駆け巡りました。実際に学校法人森友学園と土地に係る交渉を執り行っていた近畿財務局(財務省出先機関)に勤める職員(以下A氏という)が、自宅で首吊り自殺をしたのです。

 

A氏は月100時間に及ぶ残業の中で改竄を実行させられていました。NHKで報道されたところによれば、親族には「常識を壊された、異動もできない」という生々しく悲痛な叫びを吐露しており、公文書を正しく残すという公務員の「常識」を壊され、異動を願い出ても一顧だにされず、自分一人が全ての汚辱を被るよう仕向けられている現実に絶望し、苦悩の上に自死という道を選んだというのは考えなくとも分かります。

 

国際政治学者の三浦瑠麗氏は「人が死ぬほどの問題じゃない」と言っていましたが、それぐらい真面目な人は苦しむのです。何故なら、国家は文書への信用の下に成り立つものであり、その改竄は国家を破壊する行為に等しいからです。平気でいられるのは三浦瑠璃氏のようにナナメに構えている人間か、安倍首相とその仲間たちのような鉄面皮だけでしょう。

 

最初の頃は様々な思惑による憶測が飛び交い、また「遺書には改竄の記述がなかった」という報道があった事なども手伝って、政権支持者などは森友問題と自殺の因果関係を否定しようと必死に立ちまわっており、特に、元財務官僚で今は「政策工房」を介して安倍政権の規制改悪に関わっている高橋洋一氏などは、盛んに「近畿財務局のチョンボだ」という、財務省本省はおろか出先機関レベルの問題に矮小化する論陣を張って巧みに情報を誘導していました。

 

しかし、公文書改竄から半年以上が経過した今になって、ようやくA氏の自死と森友決裁文書改竄の因果関係を決定づけるスクープが舞い込んできたのです。それは、テレビ東京が昨日「森友問題 公文書改ざん 自殺職員の父が語る遺書の中身」と題して「ゆうがたサテライト」で放送した番組の中で明らかにされました。その内容は、A氏の父親本人(以下B氏)や近畿財務局OBへの直接取材で構成されており、散々飛び交っていた政権支持者の「雑音」を掻き消すには十分すぎるものです。

 

以下から番組の映像をご覧いただけますので、是非一度視聴なさることをオススメします。

www.tv-tokyo.co.jp

 

番組を見ていると、今回初めてテレビのインタビューを受けたというB氏は、冒頭「(A氏が)一人で責任を負う必要はないのに、なんで死ななければならなかったのか」と、悲痛な思いを口にしていました。それもそうでしょう。地位を利用して改竄をさせた卑怯者は堂々と世間を闊歩しているのに、させられた「被害者」である自分の息子はその事実に苦悩した挙句、もうこの世にはいないのですから怒りが湧き上がるのは当然です。

 

その後、B氏の口からは改竄を指示した人間に対する怒りの気持ちや、小さい頃から「曲がったこと」が大嫌いだったというA氏の人間性などが述べられ、インタビューは徐々に本題に入っていきます。全面的に悪いのは改竄命令を出した上層部であるにも関わらず、それでも改竄という「曲がったこと」を気に病むほどの真面目な公務員が、何故死ななければならなかったのか?すっかり不正義と不公正の代名詞となった今の政治を目の当たりにしている人間の一人として、心の底から怒りを覚えます。そして、いよいよB氏はA氏が残した「遺書」の中身について語り始めます。

 

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 (テレビ東京より引用)

B氏は声を震わせながら、それでもしっかりと「上司に言われたことを反対する訳にもいかないし、言われた通りに書き換えたと、本人の口からではなく遺書に書いてあった」と述べています。そして、続く「改竄が原因で亡くなったと考えているか」という記者の問いにも頷くB氏。まっすぐ職務に忠実で曲がったことが大嫌いなA氏を死に追いやった原因は、やはり公文書の改竄だったのです。

 

 

 

その後、番組はA氏と同じく近畿財務局に勤めていた6名のOBへのインタビューに移るのですが、そこで驚いたのは皆さんが顔を出してインタビューに答えていていたことです。これほどの問題で顔出しというのは相当の覚悟が必要だと思いますが、最初に口を開いたOBの方は「国会が閉会したら皆が関心を持たなくなる。そうなってほしくないからインタビューに答えた」と仰っていました。

 

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共に職務に励んだ仲間が自死に追い込まれたのに、本省や政権の対応は万事が我が身大事。そんな中で、この出来事が忘れ去られてしまうというのが何より我慢が出来なかったのでしょう。この場をお借りして、6名の勇気に心から敬意を表します。

 

続くインタビューの中で、国有財産の鑑定を担当していた方は「本省の幹部が一切責任を取らない中で現場の職員だけが苦しんでいる」とA氏を自死に追い込んだ上層部に怒りを露わにし、またA氏の同僚だった方は「100時間を超える残業で改竄をさせられ、追い詰められ顔が変わってしまった」と、当時のA氏にまつわる痛ましい記憶を打ち明けたりと、怒りや悲しみが交錯した発言が続く中、インタビューが徐々に核心に近づくにつれてOBの方々による重要な発言が次々に飛び出し始めます。

 

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 上の画像の方は、自身が実際にしていた仕事と照らし合わせ「8億円の値引きは極めて異常すぎる」と前置きしたうえで、実体験を踏まえ「政治家の関与はありうる」としていました。それでも、今までは当然ながら「出来ることと出来ないことは使い分けてきた」らしく、今回はその「極めて異常」な条件が成就してしまった点に鑑み「底が抜けた」という印象を抱いたようです。国会でも、森友学園に認められた4つの特例は天文学的確率であると指摘されており、この問題の異常性が改めて浮き彫りになりました。

 

下の画像の方は、麻生財務大臣が改竄当時の官房長だった岡本薫明氏を事務次官に起用した件を念頭に、処分された幹部が人事異動で出世していく点に疑義を呈しています。ちなみに、岡本氏を事務次官に起用するにあたって麻生財務大臣は「相応しい人物」だと主張した上で、記者に対し「人事権はオレにあるんだ」と吠えていましたね。

 

そんな麻生氏ですが、自分の指揮下でこれほどの不祥事を起こしているのに、一向に引責辞任する気配がありません。麻生氏に言わせてみれば、どうやら組織の「信頼回復」をする為に居座っているようなのですが、結論から言って麻生氏の存在は財務省ひいては政府の信頼を回復できていません。というより、麻生氏の存在そのものが下げていると言っても過言ではないのです。

 

そもそも、公文書の改竄は先に述べた通り行政を根本から壊してしまう行為である訳ですから、麻生大臣は3月の時点で辞めていなければなりませんでした。何故なら、権限がある者が居座っていては必要な情報や調査が行われるとは言い難く、客観的な信用は全く担保されないからです。カネを盗み出したかもしれない人間に金庫番をやらせるようなものですからね。

 

しかも、麻生大臣が辞任しなければならない理由はそれだけではないのです。まず、表向きは改竄の主犯格とされている佐川氏を、当時は発覚前だったとはいえ虚偽答弁が疑われる中で国税庁長官に登用し、改竄発覚後も「適材適所だ」と人事の正当性を強調して譲らなかったというのもありますが、決定的な理由は改竄発覚から2ヶ月が経った今年5月8日に、麻生氏が会見の場で発した信じられない発言にあります。以下の画像をご覧ください。

 

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頼んでもいないのに自ら「信頼回復」を口実にして居座っているくせに、こういう発言するのはワザとなのでしょうか?そうでなくとも、既に辞めていなければならない立場で「どの組織だって改竄はあり得る」などと、国家級の不祥事を「よくあること」として矮小化するなど論外です。しかも、この失言において最も悪質なのは続く「個人の問題」という部分です。

 

 

自身が預かる財務省出先機関で働く実直な公務員A氏が、仮に関与はしていなかったとしても監督責任者としての自らの怠慢が引き起こした改竄のために亡くなっているのに、その責任を責任者である自身は回避して改竄した個人に被せるなど論外です。

 

A氏は遺書と共に残したメモにこう記しています。

 

「勝手にやったのではなく、財務省からの指示があった」

「このままでは自分1人の責任にされてしまう」

「冷たい」

 

財務省の最高責任者であるにも関わらず、麻生大臣は改竄の責任を一切取ろうとせず、そればかりか自身が負うべき責任を回避し、あろう事かA氏がメモに残した悲痛な叫びの通り「個人のせい」にしたまま、今日まで財務大臣のイスにふんぞり返って横柄な態度で周囲を威圧しています。公人として完全に失格であるだけでなく、ここまで来ると人でなしです。

 

テレビ東京の取材によって、A氏の死と改竄との因果関係が明らかになった以上、もはや除去すべき国家のガンと化している麻生氏が大臣であっていい理由は微塵も存在しません。また、内閣改造などといって尚も麻生氏を続投させようと目論む安倍首相にも国家行政を預かる資格はありません。

 

行政は市民のものであり、A氏は市民の為に働いていました。それを、下らないメンツと権力を維持するためにメチャクチャにしたのは、馬鹿げた答弁に行政を巻き込んだ安倍首相と、真相究明を怠った麻生財務大臣です。

 

重ねて、麻生大臣の辞任ならびに安倍政権の退陣を強く求め、終わりの挨拶とさせていただきます。お付き合いいただきありがとうございました。