文字通り命を賭して辺野古新基地建設への反対を貫いた翁長知事の死去に伴う沖縄県知事選の投開票日である本日、その遺志を継いで立候補した玉城デニー候補が記念すべき勝利をおさめました。
今思い返せば、今回の沖縄県知事選ほど辛く苦しい戦いは無かったと思います。県民の関心が最も高い基地問題。その中でも特に反対の民意が根強い辺野古移設に対し、翁長前知事と同じく明確に「反対」の意思表示を行い、終始一貫してド真ん中の選挙戦を戦ってきたデニー氏は、自公ひいては安倍政権の後押しを受ける対立候補の佐喜眞アツシ氏と正面から戦うべく備えておりました。
しかし、今月上旬にデニー候補が「県民に争点示そう」と公開討論を申込んだ際、佐喜眞陣営は「時間がない」として、自民党と密接な関係性を有するJC(日本青年会議所)主催の討論以外を拒みました。翁長知事の死去によって前倒しになったとはいえ、一ヶ月は期間があったのにおかしな理屈です。要するに、佐喜眞候補は言葉をウリにする政治家でありながら、県民に開かれた議論から逃げたのです。総裁選時の安倍首相に重なるものがありますね。
そればかりか、翁長知事の遺志に恥じぬようド真ん中の選挙姿勢を貫き続けるデニー陣営に対して、公開討論という正面決戦を拒む佐喜眞陣営は、公明党の遠山議員などが中心となって、事実無根の別荘利殖疑惑や隠し子疑惑といった根も葉もないデマを流布するというアンフェアな戦術によって、デニー候補から有権者の信頼を剥ぎ取ろうと画策しました。
その上、辺野古移設を強行する安倍政権のバックアップを受けている事実上の容認派であり、デニー候補のように民意を代弁して新基地反対姿勢は打ち出せない佐喜眞陣営は、自公の十八番である卑劣な「争点隠し」を行いました。結果として、選挙が終わるまで佐喜眞候補は辺野古に対する態度を明確にしませんでした。
更に、佐喜眞候補が掲げた公約には有権者の判断力をバカにしているあからさまなウソまで混ぜ込まれていたのです。それは「携帯電話料金を4割削減する」というものでした。
ちなみに、携帯電話料金を決めるのはKDDIやソフトバンクといった所謂「キャリア」であり、沖縄県知事はおろか国にも権限はありません。しかし、佐喜眞陣営はこれを「若者」向けの公約として、あたかも知事として実現可能であるかのように見せかけて発表したのです。ここまで徹底されると空恐ろしい感じがしますが、佐喜眞陣営のアンフェアぶりはそれだけにとどまりません。
御存知の方も多いかと思いますが、自公系の選挙と切っても切り離せないのは創価学会を駆使した「動員」です。この沖縄県知事選においても、公明党は必死になって期日前投票を呼び掛けていました。それが、蓋を開けてみれば4分の1がデニー候補に流れていたというので驚きましたが、佐喜眞陣営は今回、動員だけに留まらず有権者の投票に干渉するという、選挙制度の意義そのものを貶める暴挙にまで手を出しました。それは、投票用紙を撮影させてきちんと佐喜眞候補に投票したか否かを確認していたという、憲法が保障する秘密選挙の意義を根本から否定する深刻な疑惑を伴ったものでした。
このように、凡そ民主主義国家とは思えないような相手陣営からのアンフェア満載のネガティブキャンペーンに晒されながらも、玉城デニー候補は草の根の力で着実に支持を固めていったのです。その辛抱強さには、正直申し上げて相手陣営の手口の悪辣さと見比べてある種の苛立ちさえ感じてしまったのですが、結果としてデニー候補は佐喜眞候補に大差をつけて勝利し、彼の堅実さと芯の強さが正しかったのだと証明され、私はまだまだ薄っぺらな人間なのだと思い知らされました。
今回の沖縄県知事選は、県民が関心を持つ重要問題に対して態度を決して誤魔化さず、全ての主張を正面から伝えきったデニー候補が圧倒的勝利を収めたという、昨今では残念ながら「稀有」な選挙といえます。しかし、こんな当たり前の結果を生み出す政治を遠い存在にしてしまったのは、他でもない私達の責任です。
私達は、今日の出来事から様々な教訓を学び取らなければなりません。玉城陣営のフェアプレー精神をお手本に、そしてラフプレー満載の佐喜眞陣営を反面教師として、よりよい政治を実現していきましょう。